傀儡の恋
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アークエンジェルにはアスランの他に彼と一緒に逃げてきた少女──メイリンとネオも同乗することになった。
「それならば、ここを探してみればいい。ウズミ様が開発させていたMSが残っているはずだ」
そう言ってきたのはキサカだ。
「かなり特殊な機体と言っていたが、ノアローク一佐かレヴェリー三佐なら使えるだろうね」
さらに彼はこう続ける。
「と言うことはかなり厄介な機体ですか?」
「動かすだけならば他の者でも十分だろうが、性能を十分に生かせるとなれば限られた人間だけと言うことになる」
実験的に組み込んだシステムのせいで、と付け加えられた。
「メビウス・ゼロのガンパレルのシステムを応用したドラクーンを装備しているからね」
そう言われてラウは納得する。ネオも納得したようだ。
「なら、ノアローク一佐が使われるといいでしょう」
脇で話を聞いていたラクスがこう言ってくる。
「ラウさんにはこちらで用意した機体がありますし」
彼女はさらにそう付け加えた。
「ならば、ストライクはおいていけ」
さらにカガリがこう言う。
「ストライクフリーダムを宇宙に上げるとなれば、地球上での旗印が必要だからな」
「だけど、カガリ。無理はしないでね? フォローできないから」
そんな彼女に対してキラが釘を刺す。
「それは私のセリフだぞ」
間髪入れずにカガリがそう言い返した。
「お前が無茶をしていないか、いつも心配になる」
それでも、と彼女は言葉を重ねる。
「これからのことを考えれば、それぞれがそれぞれの役目を果たすしかない。全く、馬鹿のせいで有能な人物を失う結果になったのが辛いな」
「カガリ……」
「だからこそ、この国の自由を失うわけにはいかない。頼んだぞ」
「もちろんだよ。僕も彼等の主張は受け入れられない」
キラはそう言ってうなずいてみせる。
「大丈夫ですわ、カガリ。わたくしもおります。ラウさんもバルトフェルド隊長もアークエンジェルの方々もです。一人ではなければ何とでもなりますわ」
そうでしょう? とラクスが笑った。周囲の者達の顔にも笑みが浮かぶ。
「気をつけてな」
その言葉にキラが小さくうなずいて見せた。
マスドライバーを使ってアークエンジェルを含めた三隻が宇宙へと上がっていく。
「無事で帰ってこい」
その航跡を見ながらカガリは小さな声でそうつぶやいた。
オーブ以上にザフトの動きは速かった。
月にある地球軍の基地に逃げ込んだジブリールへと攻撃を開始したのだ。
多勢に無勢と言うべきか。
あるいは使っている兵器の基本的な性能の差か。
どちらにしろ、地球軍に勝ち目はなかった。
追い詰められたあげく、ミネルバの主砲によってこの世界から永遠に消えた。
「見つけた」